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2005/04/09

福翁百話 〜明日へのともしび〜 福沢諭吉著 金園社刊

家の前の桜が満開だ。強い風に花びらが舞う。

福沢諭吉の本では「学問のすすめ」や「福翁自伝」が有名だが、この「福翁百話」は明治29年(1896年)3月から明治37年(1904年)7月までの百回にわたり時事新報に連載されたものだ。

第一話は宇宙。宇宙の広大さ、美しさ、構造の緻密さ、誤りのない一定不変の規則をもって運営支配されていることの不思議さの前に呆然としてしまう。人間の存在のなんと小さなことよと諭吉の宇宙(天工)への思いが綴られている。

第二話の天工では、「万物の必滅は天然の真理なりといえども、その滅するはただ形を変ずるのみにして物質の消滅するにあらず。」と全てのものが移り変わる中で物質そのものは形を変えることはあっても地球や宇宙から消えるわけではなく、ただその形をかえるだけなのだといっている。

人間を見ればその構造の精巧さやその働きは人工のものではまねることはできない。このように自然の微妙な働きは人智の及ばないもので、この偉大な力(天)がどこにあるかを捜そうと思えば、全てのものが天であり、塵の中にも天を見ることができる。いや、近くを見れば自分自身も天の力が宿っているひとつの肉の塊であると発見することになる。

第五話の因果応報では、「人間の一挙一動、一言一行は微妙の辺に原因結果の争うべからざるものあるを証するに足るべし」と悪を行うものには必ず災いが降りかかり善を行うものには福が訪れるはずであるが、世の中必ずしもそうとばかりはいえない。けれども天の広大さと人間の無知から、天の本当の動きは人間がわかるものではない。ただ人間は因果応報を信じて少しでも言行ともに善に近づけていき、祖先に対してはその苦労を感謝し、子孫には文明進歩のきっかけを残したいといっている。

百年前とは思えない、人生のみちしるべとなる大切なひとつひとつの話から、諭吉のこころが伝わってくる。

心に残った言葉

元来人間の心は広大無辺にして、よく理屈の外に悠然たるを得べきものなり。

人生を戯れと認めながら、その戯れを本気に勤めて倦まず、倦まざるがゆえによく社会の秩序を成すと同時に、本来戯れと認むるがゆえに、大節に臨んで動くことなく、憂えることなく、後悔することなく、悲しむことなく安心するを得るものなり。

人間世界の禍福はその到来に遅速遠近こそあれ、概して人間の言行に由来するの事実を見るべし。

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