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2005/09/30

出家とその弟子 倉田百三著

浄土真宗の基礎を作った親鸞とその子善鸞、日本最高の宗教書といわれる「歎異抄」を書いた親鸞の愛弟子の唯円、この3人の登場人物がおりなす人生の矛盾、信心、愛、苦悩を戯曲化した宗教文学の傑作です。

この本を通じて感じるのは登場する3人とも純粋なことです。親鸞はその師である法然を、弟子である唯円は親鸞を慕い、勘当された親鸞の子善鸞もまた最後まで父への思いを持ち続けます。源平の動乱から鎌倉時代にむかう戦乱の世のなかで、南無阿弥陀仏と念仏を唱えるだけで阿弥陀如来が作った浄土にいくことができる、すくわれることができるとの教えをひろめ、絶望的な状況にある民衆にわずかな光を与えた親鸞の尊いこころが描かれています。

第一幕、雪の夜に一夜の宿を求めた親鸞と良寛と慈円。訪ねたのは、くしくも将来の愛弟子となる唯円の家。その父左衛門は、悪人にならなければ親子3人生活していけないというジレンマの中で、自らを酒で紛らわす毎日でした。雪の中一夜の宿を求めた親鸞ら3人を杖で打ち、冷たく追い出してしまいます。その夜、過ちを悔いた左衛門は3人を招きいれ心からわびます。

自らの弱さをわびる左衛門に、親鸞は自らも泊めることを断わられたことを恨む気持ちがおこったこと、全ての人間が他人をだまさずにはいられない、他の生き物の命を奪わずには生きられない、悪人であること、阿弥陀如来は悪人をこそ許し、救われることを諭します。左衛門を許す親鸞の言葉は静かなのですが、圧倒的な迫力で読むもののこころを熱くしてくれます。

唯円と遊女であるかえでの恋は、周囲を、そして二人自身を傷つけます。しかし親鸞は唯円を責めはしません。全ては自分の責任であり、最後は仏がきめられるのだと答えます。

従兄弟の妻に恋をしてその女を死にいたらしめ、家庭を壊して勘当された親鸞の子善鸞は、親鸞臨終のそのときまであうことができませんでした。こころでは子どもを許している親鸞も周囲を慮り逢わなかったのです。

臨終のその時にであった親と子、親鸞は善鸞に仏を信じるかと問います。絶句した善鸞は最後まで「わかりません」と突っ伏したのでした。

久しぶりに青春時代に戻った気がしました。新潮文庫の奥付には、
昭和二十四年十一月十日 発      行
平成十五年六月五日    八十四刷改版
平成十七年六月三十日   八十六刷          とあります。

この「出家とその弟子」は倉田百三が26歳の大正5年(1916年)に出版されています。もうすぐ100年がたとうとしているわけです。八十六刷という数字が、たくさんの人に読み継がれている名著あることを証明しています。

一度よんだだけですが、この重厚な物語が若干26歳の青年によって書かれているとは思えませんでした。

心に残った言葉

幾千代かけてかわるまいとな。明日をも知らぬ身をもって!(熱誠をこめて)人間は誓うことはできないのだよ。(庭をさして)この満開の桜が、夜わの嵐に散らないことを誰が保証することができよう? また仏さまのみゆるしなくば、一ひらの花びらも地に落ちることはないのだ。三界の中に、かつ起り、かつ亡びる一切の出来事はみな仏様の知ろしめし給うのだ。

祈りはここに生の勇気となる。運命に対する忍従ではない。諦念ではない。祈りは一つの創造的行為であり、転身なのだ。

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コメント

TBありがとうございます!
なんと申しますか、がーん。。。となるお話でした。100年も前に書かれた作品なのですね。
尚更感慨深いです。。

投稿: mk | 2005/10/03 00:22

mkさん、はじめまして。
TBしたところ、わざわざおいでくださり、ありがとうございます。
おっしゃるとおり、100年前に書かれたと思えないくらい衝撃的なみずみずしいお話でした。なんといえばいいのでしょうか、とにかくすごいという内容でしたね。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: たっくん | 2005/10/03 21:14

お久しぶりです!
すっかり読書の秋ですねー
「出家とその弟子」
思い出深い作品です。
とても人間的で良いですよねー

これからもよろしく!

投稿: ぱんだ | 2005/10/23 23:50

ぱんださん。
ご無沙汰しています。
本当に読書の秋を迎えました。
読みたい本は数あれど、読む時間をなんとか見つけていくのは楽しい限りです。

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: たっくん | 2005/10/24 11:28

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