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2006/01/09

黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す―、三國陽夫著

三國陽夫氏は、日本で最も早く米国CFA協会の認定証券アナリストとなった一人であり、企業が発行する債券の元利金支払いが確実かどうかを調査して、格付けを発表している三國事務所の代表です。

三國事務所のホームページ
http://www.mikuni-rating.co.jp/

筆者は、格付け業務に携わる関係上、対象となる日本の大企業や大銀行、合計1500社近くの貸借対照表や損益計算書などを常にみてきました。このような分析のプロからみて今の日本はどのように見えているのでしょうか。

日本経済を苦しめたデフレの真犯人は、貿易黒字だ、と三國氏はいっています。輸出拡大を前提に生産拡大を追及する間接金融優位の経済政策を堅持しているかぎり、デフレはなくならない。輸出拡大を続けるためには、円安が望ましい。貿易黒字で獲得したドルを日本円に交換すると、円高になってしまう。それでは困るのでそのドルをそのまま米国の国債などに投資する。また、為替が円高に向かうと日銀は円売りドル買い介入を行い、ドルの持ち高が増えていく。

輸出で稼いだ黒字を日本がドルでアメリカに預け、日本の利益ではなく、アメリカの利益に貢献している限り、円高圧力もデフレ圧力も弱まることなく、政府・日銀がいくら財政出動や金融緩和というデフレ解消策を講じても一向に持続性ある効果は現れないのである。

初売りのバーゲンセールはどのデパートも活況で、この寒さのせいもあってコートなどは値下げしなくても売れているようです。

企業業績も全般的に好調です。日経平均株価は16000円強まで上がってきたとはいえ、1989年末の最高値38000円台と比べるとまだ半値以下ですが、東京証券取引所一部上場企業の株式時価総額でみると、1989年末と比べて約8割の水準まで戻してきました。

原油や商品価格が上昇してきており、10年以上日本を苦しめてきたデフレもうすぐ終わりそうな気配もあります。しかし、デフレの解消はそう簡単ではないというのが筆者の指摘です。

なぜなら、外需依存型の経済モデルはいまだ変わらず、デフレの原因である経常収支の黒字は高い水準を維持している。デフレを生む歪んだ構造は依然、温存されたままである。いずれアメリカの住宅バブルがピークアウトすれば、景気の後退は避けられず、対アメリカ輸出に依存する中国経済も大きな打撃を受ける。世界経済を牽引するアメリカと中国の景気が減速しはじめると、それに依存する日本経済はたちまち失速し、再びデフレが頭をもたげてくるだろう。

のほほんとこれからは景気はよくなると勝手に考えていたので、この本を読んではっとさせられました。

それではどうすればデフレは解消できるのか。筆者はこう考えています。

じゃぶじゃぶにお金を供給してもインフレにならない。金融政策が十分に機能しないのは、為替レートに介入しているからだ。これを解消するためには、為替レートを市場に委ねざるを得ない。イギリスのサッチャー首相が、長年苦しんでいたインフレと衰退から脱却し、成長軌道に乗せた例をあげて、政治の主導が必要であるとしています。

日本にそれができるかについて、昨年9月の郵政民営化を争点にした衆議院選挙結果が突破口になるかもしれないと指摘しています。選挙の集票が官僚や業界、圧力団体から政策へと切り替えられる動きが出てきた。そうすれば実質的に日本を動かしている官僚の視点ではなく、国民の視点から政策を形成する可能性がある。間接金融制度を支えてきた生産側の論理から消費者側の論理へ変わろうとしている。当然、軋轢がおきるだろうが、結果的に経済が成長することで両者の対立は解くことができる。

本格的な経済成長を求める政策を実行し、主権を行使する首相の登場が待たれる。

近づいてきた自由民主党の総裁選挙に注目が集まります。

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